リートとは
リート(不動産投資信託)は、不動産への直接投資に付随する多額のコストや流動性の問題への懸念をなくし、商業用不動産へのより身近な投資機会をもたらす資産です。本誌ではこのユニークな資産について、投資家からよくあげられる質問にお答えします。
そもそも不動産証券とは?
不動産証券を発行する企業は、ショッピング・モール、オフィス、賃貸住宅等の建物や土地を保有及び運営しています。これらの企業の多くは、賃料収入による継続的なインカムを生み出す商業用不動産の取得や物件の価値向上に注力し、比較的安定した経営を行っています。
リートとは?
リートまたは不動産投資信託は、不動産証券の特殊な形態です。リートとして設立することで不動産会社は税制面の優遇を受けることができ、株主は実物不動産へ投資した場合と同じ効果を期待できます。リートは課税純利益の大半を株主に分配することが義務付けられているほか、事業運営、組織、所有などの面で規定の要件にしたがう必要があります。その代わりリートは、分配の対象となるインカムおよびキャピタル・ゲインに対する法人税が免除され、結果的に税負担が軽減、または全く課税されない場合もあります。リートに義務付けられている最低分配要件のため、リートは、リスク特性が類似する他の株式に比べ、一般的に高い配当利回りを提供します。
リートの設立要件とは?
リートとして設立するためには、各国の法律が定める規定の要件を満たさなくてはなりません。米国における要件は以下の通りです。
リートの要件 | 意味 | ||
各年度の課税純利益(キャピタル・ゲインを除く)の最低90%を配当として株主に分配しなくてはならない。 | 法人としてのリートの段階では所得に対して課税されないため、リートの株主に税負担が課されることをルールで明確にしている。これらの配当は所得として課税される。 | ||
総資産の最低75%は、不動産、不動産担保融資、または他のリートの株式に投資しなくてはならない。 | リートの主要な事業は不動産投資でなくてはならない。 | ||
総収入の最低95%は、賃料、不動産担保融資の受取利息、または不動産の売却に伴う売却益から得られなくてはならない。 | リートの主な収入源は不動産関連によるものでなくてはならない。 | ||
取締役会またはトラスティーによる運営が行われていること。 | 株主に対する受託者責任を果たさなくてはならない。 | ||
発行する株式は完全に譲渡可能で、100人以上の株主がおり、5人またはそれ未満の株主が50%以上の株式を所有していないこと。 | 幅広い投資家の基盤を維持しなくてはならない。 | ||
課税対象となる法人として設立されること。 | 営利目的の企業でなくてはならない。 |
リートの成り立ちは?
リート制度は、1960年に米国で初めて導入された後、オランダ(1969年)とオーストラリア(1971年)で導入されました。しかしながら、初期の法律がリートの運営に厳しい制限を課していたことから、リートは投資家の関心をあまり集めることはできませんでした。そして米国では、1980年代の税制改革により、不動産会社と投資家にとってリート制度がより魅力的なものになりました。さらに、リートの運営面での柔軟性を高める方向にリート法制が簡素化されました。
その後、商業用不動産価格の大幅な下落に続き、1990年代初頭に近代リート時代が到来しました。当時多くが過剰債務を抱え、S&L(貯蓄金融機関)危機の折から、銀行を通じた資金調達が困難になっていた米国の不動産運営会社に対し、リート制度は公募市場にアクセスする手段を提供しました。その結果、米国では1991年から1997年にかけて、100超のリートが設立・上場されました。他国でも同様の法制度が導入され、今日見られるグローバルで多様なリート市場が形成されました。
リートを導入している国は?
過去20年間に、商業用不動産は実物不動産市場から上場不動産証券へと大きく変化しました。この主な理由として、上場不動産と世界の不動産に対する投資家のニーズが高まる中で、近代リート制度の採用が進んだことが挙げられます。現在の各国におけるリートの導入状況は以下の通りです。
リート制度採用国 |
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リートを |
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リートの導入を |
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米国(1960) |
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マレーシア(2005) |
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チリ |
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中国 |
2014年6月末日現在、出所:UBS、コーヘン&スティアーズ
世界の不動産証券市場の規模は?
2014年6月末日現在、リートを含む不動産証券市場は456銘柄で構成され、時価総額は1.7兆米ドルに達しています。現在市場の35%を米国が占め、次いでアジア・オセアニア地域が28%、欧州とその他地域がやや低い割合を占めています。リート市場の成長率は新興国が最高で、2000年における2%の割合から、足元では全市場の19%を占めるようになっています。世界の不動産証券市場の4分の3以上をリート及びリートに類似した仕組みが占めており、残りを開発業者とリート以外の不動産会社が構成しています。
リートが保有する物件のタイプは?
以下のグラフに示すよう、リートが保有する物件には大まかに8つのタイプ(セクター)があります。それぞれのタイプには賃貸契約期間、供給障壁、テナントに影響を及ぼす経済的要因に異なる特徴があります。例えば、ホテルは部屋を1日単位で貸し出しますが、オフィスの賃貸は10年以上に及ぶこともあります。一般に、短期の賃貸契約を主とする物件セクターは、需要が即座に賃料と稼働水準に反映されるため、より景気サイクルに敏感となります。一方で長期の賃貸契約を主とする物件セクターは、より債券に似たキャッシュ・フローとなるため、景気サイクルへの感応度が低くなります。
リート分析における専門用語
NAV(純資産価値)-簿価に類似。NAVは基本的には不動産会社が行う不動産投資を時価評価したもので、保有物件の時価推定額から負債を控除したものです。分析には、様々な材料を用いて不動産会社のNAVを推定し、株価が保有物件に対して割安(ディスカウント)、割高(プレミアム)、または等価で取引されているかどうか検討します。=
FFO(ファンズ・フロム・オペレーション)-収益に類似。FFOは不動産会社の営業収益を測るものです。まず、不動産売却益は繰り返し発生するものではなく、不動産会社の安定的な配当支払い能力には寄与しないため、純利益から不動産の売却に伴う利益を控除(損失の場合は加算)します。次に、不動産価格は、固定施設や設備への投資が減価していくのと異なり、時間の経過につれて上昇する傾向があるため、減価償却費などの非現金支出を加算します。不動産会社の評価では、1株当たり利益(EPS)の代わりに、1株当たりFFOがしばしば用いられます。
NOI(営業純利益)-EBITDA(税引き・利払い・償却前利益)に類似。NOIは不動産の総賃貸収入から管理費などの諸経費(固定資産税を含みます)を控除することにより、不動産から発生するキャッシュフローを求めます。したがって、NOIは企業分析におけるEBITDAと類似しています。
キャップレート(還元利回り)-利回りに類似。キャップレートは不動産価値を利回りで表したものです。一般に、キャップレートが低いほど、個々の物件または不動産のポートフォリオは優良(例:優れたキャッシュフローの伸びと優良なテナント)とされます。個別物件の取得価格について説明する際に、例えば「XYZ リートがオフィスビルを6.5%のキャップレートで購入した」などと言いますが、この場合のキャップレートは不動産のNOI(収入-費用)を取引価格で除すことによって求めます。ある物件のキャップレートは、NOIを現在価値の推定値で除して求めます。また、不動産会社のキャップレートは、会社のNOIを総保有物件価値で除したものです。キャップレートは、Baa格付け社債の利回りとの対比で表現されることもあり、マイナスのスプレッドは不動産価格が高いことを示唆する場合があります。
コーヘン&スティアーズとリート
コーヘン&スティアーズは過去29年以上に亘り、お客様のリート市場への投資のお手伝いをして参りました。不動産証券に特化した世界初の運用会社として1986年に設立され、今日当社は多くの上場不動産会社の主要株主となっております。当社はこれまで一貫して積極的にリートに携わり、様々な市場サイクルから養った視点を通じて、安定した投資を行ってきました。
グローバルな運用会社として、当社の不動産戦略は幅広い市場を投資対象としており、お客様には世界最大規模かつ経験豊富な不動産証券投資チームのサービスを提供しております。
指数定義
投資家は当資料に記載された指数に直接投資することはできません。また、指数のパフォーマンスはいかなる手数料、費用、税金も控除されておりません。
FTSE NAREIT エクイティ・ リート指数:主に不動産の持分に投資する米国の全上場リートの時価総額加重インデックスです。
FTSE EPRA/NAREIT 先進国不動産指数:浮動株の時価総額が1億米ドル超で、収入の半分以上を不動産関連事業から獲得している先進国の企業から構成される時価総額加重のトータルリターン・インデックスです。
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